第11号


会長の御挨拶

楽楽理会会長 前 和男

 1965年に結成された「楽楽理会」は今年48年目の夏を迎え、会員数も1300名余を数えております。また、2003年に発行を開始した「楽楽理会通信」も毎年一回のミニ通信ながら、昨年には第10号に達しました。そして、その第10号を最後に紙媒体で続けてきた発行を電子媒体に移行することへのご賛同をお願いしたのは御承知の通りです。

 ところで創設以来、会費徴収を行っていない「楽楽理会」の台所事情はけっして「楽楽」ではなく、「楽楽理会通信」や5年に一度の「楽楽理会会員名簿」の発行、諸通知、楽理科就職支援データの業務などの運用に必要な費用の案出が苦しい状況となり、「楽楽理会通信」第10号でのお願いとなった次第です。
 これに対して、みなさまから温かいご支援をいただき、3月末を以てひとまず終了することができました。厚くお礼申し上げるとともに、頂いたお気持ちを無にすることのないよう、会の健全な運営管理のために心して使わせていただく所存です。この紙上を借り、改めて御礼申し上げます。なお、ご芳志をお寄せ下さった方々のお名前につきましては、掲載に同意されるか否かのご意志を確認のうえ、「楽楽理会通信」のホームページを通じて《ご寄付を頂いた方のリスト》にアクセスできるようにしております。

 来年、2014年は5年ごとに開催している総会及び懇親会が予定され、新しい「楽楽理会会員名簿」を発行する年にも当たっております。名簿については、より最新の内容を収載したものになるよう、ご存じの情報などお知らせ下されば幸いに存じます。
 会員のみなさまのご健勝を願ってご挨拶といたします。


いま楽理科では――主任からのご報告

福中 冬子(楽理科主任)

 昨年度に引き続き、今年度もまた学科主任を務めることになりました。至らぬところもあるかと思いますが、どうかよろしくお願い致します。

1.音楽学部近況

 後期始業時までの終了が予定されていた旧4号館(新名称:国際演奏芸術高度研究スクエア)の改修工事は、当初のスケジュールに若干の遅れが発生し、完成は年明けにずれこむことになりました。主に耐震補強および遮音・防音を目的とする工事ですが、従来、学内演奏会(無料の学位リサイタル等)を主たる用途としてきた第6ホールが、より開かれた、パブリックな演奏会場として生まれ変わります。音響・照明設備も大きく改良されることになるようです。一方、足立区では新たな学生寮の建設が進行中で、こちらは今年度末完成予定ですが、全室個室、バス・トイレ・ミニキッチン付きと、昭和世代からするとまるで5つ星ホテルの様相です(その分寮費も割高に設定されています)。
 しかしながら、こうした設備面での改良を通じた方策を以ってしても歯止めがかからないのが、芸大を含めた芸術系大学への進学率の低下です。少子化を根源とする大学定員確保の困難を巡っては社会問題として俎上にのって久しいですが、その裏で見逃されてきた感があるのが、芸術系大学のアピール度の低下であり、実際統計によると、ここ20年程で全国の大学進学者数に対する割合は約2%からおよそ半減しています。バブル期以降の実学主義とも関連しているのかもしれませんが、芸術創造の必要性を巡る認識が、年々希薄になってきていることの顕れでもあると思われます。芸術活動は限られた層のための「娯楽」ではなく、社会全体が未来を築いていく上で必要な、現在への批判的眼差しの一部であることを再認識し、広く訴えていくことが、これまでに以上に求められていることは間違いありません。

2.楽理科近況

 皆様もご存知のとおり、2002年度に学部に音楽環境創造科が新設され、また2006年度には大学院の非実技系の各研究領域を集めた「音楽学」(大講座)が「音楽文化学専攻」(「音楽学」「ソルフェージュ」「音楽教育」「応用音楽学」「音楽文芸」「音楽音響創造」「芸術環境創造」)として改組されましたが、ここ数年楽理科が行なっている志願者向け学科説明会(学部・大学院)での手応えから見えてくる限りでは、各領域の住み分けは的確に行われているようです。また昨年度・今年度の修士課程修了者・修了予定者の進路を見ましても、博士後期課程にて研究継続を希望する学生数が維持されている一方で、マスコミ(放送局、新聞社)や出版社などへの就職が決まった学生もおり、そこからは、楽理科がこれまで輩出してきた人材に見られる高度な「専門性」が、引き続き広く社会から求められており、また楽理科がそうした要請に応えていることが窺いしれます。
 ただ、上でも触れました通り、少子化が進む中、この先どのようにして質の高い学生を確保していくかは、我々にとって喫緊の問題です。言うまでもなく、我々教員がこの先、研究・教育に一層の力を注いで行かねばならない事は当然ですが、他方、現行の制度を見直す必要もあるかと思われます。例えば、日本でしか、そして芸大でしか経験することの出来ない教育を受けたいと願っている優秀な外国人留学生を効果的に取り込んでいくための戦略を考えることは、待ったなしの課題と言えるでしょう。また、妥当な理由があれば、博士論文を日本語以外の言語でも提出可能にするように制度を整備することは、それに伴うであろう様々な困難を勘案しても、実り多き事のように思われます。これにより、芸大での研究を希望する優秀な外国人留学生へのアピールが増すでしょうし、また何よりも、これまでは、研究としてどれだけ卓越した貢献を為していようと、日本語で書かれているが故に、国際的に認知度が低いままであった博士論文の成果が、よりグローバルな研究社会に共有されることになるのではないでしょうか。これらに関しては議論を続けて行くことが必要となりますが、皆様からも広くご意見を頂けますと幸いです。

3.学位規則の改訂に伴う、博士論文のインターネット公開について

 昨年度末、文科省により「学位規則」の一部を改正する省令が公布され、今年度修了者分から附属図書館リポジトリを通じての博士論文全文の公開が義務付けられることとなりました。「やむを得ない事由」がある場合を除き、すべての博士論文は学位授与の一年以内に全文がインターネット公開されることとなり、それは、今までにも増して論文の質の確保が必要となることを意味するものです。前世紀終わりに文科省主導で行われた大学院重点化政策の「効用」もあり、以前は「特筆すべき顕著な業績」に値すべきとされていた博士論文が、自立的な研究活動等を行うための研究能力の基礎を築く事を目的とする博士課程の「集大成」へとその位置づけを変えました。それ自体は問題とすべき事ではありませんが、事前審査の過程のあり方も含め、楽理科としても、博士論文のあるべき姿をもう一度よく考えなおす時期に来ているのかもしれません。教員一同、これまで以上に、研究指導に力を注いでまいりたいとおもっておりますので、皆様のお力添えを引き続きよろしくお願い致します。


楽理科の現状(在籍者数)

  • 学部入学定員  23名
  • 学生総数 148名
    (学部101名、修士課程20名、博士後期課程25名、研究生2名
  • 外国人留学生総数 7名
  学部           修士    
  学部1年 学部 2年 学部 3年 学部 4年 学部 5年 学部 6年 修士1年 修士 2年 修士 3年
総数 23 23 23 24 7 1 9 10 1
男子内数 4 3 6 10 2 0 3 2 0
女子内数 19 20 17 14 5 1 6 8 1
留学生内数 0 0 0 0 0 0 0 2 0
  博士           研究生
  博士1年 博士 2年 博士 3年 博士 4年 博士 5年 博士 6年 研究生
総数 5 7 4 6 2 1 2
男子内数 2 1 1 2 1 0 1
女子内数 3 6 3 4 1 1 1
留学生内数 1 1 0 1 0 0 2