第18号

 

楽楽理会第4回総会および懇親会報告

 2019年12月15日(日)、楽楽理会の第4回総会(16:00〜16:40)が東京藝術大学5-109教室にて開催されました。総会には39名が出席し、議長に選出された遠山菜穂美さんの進行で、楽楽理会の規約に従って5年間にわたり副会長を務められた土田英三郎氏から大角欣矢氏への交代が承認されました。その後、楽楽理会の現状報告と会計報告がなされ、楽理科の現状についても報告がありました。

 総会に続いて、大浦食堂で、61名が出席して懇親会(17:00〜19:00)が行われました。大角新副会長の司会により、加納民夫会長からのご挨拶、角倉一朗先生のご発声での乾杯で会が始まりました。会場は世代を超えた歓談の声で賑わいました。


新型コロナ・ウィルスとの共生後の文化・芸術の役割

楽楽理会会長 加納 民夫

©堀田力丸

 昨年12月15日、5年ぶりに楽楽理会総会と懇親会が開催されました。年末の繁忙期ではなく新年会にしたらどうかとの意見もありましたが、事務局のご努力で年内に開催でき、よかったと思っています。一つは、2019年は東京音楽学校が東京藝術大学となり楽理科が創設されて70周年という節目の年だったこと、もう一つは総会直後に発生した新型コロナ・ウィルスに伴うさまざまな規制の前に開催できたことです。 コロナによる被害は、会員の皆さんの生活や仕事にも大きな影響を強いたことと思います。私たちは、この先もウィルスと共生しながら、生活の仕方を変えていかなければならないでしょう。私たちが深く関わっている文化・芸術の世界の在り方にも、変化が迫られています。 そうした中、6月に入って各演奏団体が公演再開に向けて医学や科学の専門家たちの立ち会いのもと無観客での試験演奏を行い、管楽器などの空気の流れを計測したり、歌声から発生する飛沫の飛距離を調査したり、それにどう対応していくかを検討しており、いよいよ集客をしての演奏会にまで漕ぎ着けました。 創作の世界でも、奏者が在宅のままリモート会議用アプリで演奏する作品なども登場し、これからの作品のモデル・ケースもでてきました。 しかし、音楽家たちが活動していくためには資金が必要となります。各企業からの助成金の動きもありますが、公的には(独法)日本芸術文化振興会が「文化芸術創造復興基金」を始めました。文化・芸術が未来に繋がっていくためにもこうした動きに注目していきたいと思います。                            


副会長就任にあたって

大角 欣矢

 このたび、土田英三郎先生の後任として楽楽理会副会長を務めることになりました。何かと行き届かぬ点が多いとは思いますが、何卒よろしくお願い申し上げます。 楽楽理会は、東京藝術大学音楽学部楽理科及びその大学院に在籍・在職したことのあるすべての学生・研究生・教員(非常勤講師・助教・助手を含む)から成る組織です。私が楽理科に入学したのは1979年のことでした。その頃は楽楽理会など遠い世界の話のように感じていました。しかし、毎年の遠足や合宿などを通じて卒業生の方々や普段の授業ではお目にかかることのない先生方と交流するうちに、楽理科がもつ層の厚みや広がり、多様性を知るようになりました。『楽楽理会会員名簿』の頁をめくってみても、実にさまざまな分野で活躍されている方々が多く、今振り返ってみると、楽理科入学と同時にこのような広大な人的ネットワークの一端に加わることができたことは、望外の幸せだったと思います。 楽理科にこれまで在籍・在職された方々の個性の幅広さを思う時、思い出されるのは、私の恩師、服部幸三先生が最終講義で語られた「楽理科は何をするところか」という言葉です。

その抜粋は楽理科の公式ホームページに掲載されています。

【http://musicology.geidai.ac.jp/wp/about/gakurika/特別寄稿%E3%80%80楽理科は何をするところか-2/】

 「何をするところなのか」、「何をすべきか」について一律に答えを出せないことこそが、むしろ楽理科の特質であり、それは各自が常に問い続けていかなければならない、と先生がおっしゃったことは、そのまま楽楽理会にもあてはまるように思います。音楽に対する熱い思いという一点で結び合いつつも、「こうでなければならない」というあらゆる偏狭さや型にはまった思考に囚われることなく多様性を包含する懐の深さが、楽楽理会の良さではないでしょうか。これからも楽楽理会は、折にふれて語り合い、議論し合える気さくさ、必要ならば助け合える連帯感をもった、自由で、緩やかで、暖かいネットワークであり続けてほしいと願っています。 これからも引き続き、楽楽理会をよろしくお願いいたします。


2019年度 楽楽理会第4回総会 議事録

12月15日(日)16時~16時40分 5-109教室

司会(福中冬子さん):総会を始めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

  1. 会長挨拶

会長(加納民夫さん): 5年前に前任の前和男さんから引き継いで、会長に就いております。今回の総会はもともと10月12日に予定していましたが、大きな被害を出した台風19号と重なり延期することとなりました。事務局のこの決定は当を得たものであったと思います。年明けに開催する案もございましたが、できるだけ早い時期が良いということもあり、年内に開催することができました。しかし、年末押し迫った開催のため、当初出席を予定されていた方で今回は出席が叶わなかった方も多くいらっしゃり、少し残念ではあります。 楽理科が誕生したのが1949年、昭和24年で、ちょうど今年で70年になります。また、楽理科が設置された年に、東京音楽学校が東京藝術大学音楽学部になりました。そして、同窓会であるこの楽楽理会が発足したのが1965年、昭和40年です。実は、私が入学した年でもあります。楽楽理会の活動については、お手元の資料の3ページ目に掲載されているのでご覧ください。あと30年で100年です。楽理科が今後も発展し、日本の音楽学、また音楽の「現場」でもリードしていっていただければと思います。 それでは、これから熱心なご討議をしていただき、有意義な総会にしていただければと思います。

  1. 議長選出

司会:議長の選出に移ります。立候補していただける方がおられないようでしたら、遠山菜穂美さんにお願いしたいと思います。(拍手で承認)

  1. 副会長の交代について

長(遠山菜穂美さん):不慣れではございますが、皆様のご協力をいただければと思います。よろしくお願いいたします。総会次第の3番目から議事に移ります。今年度はまず、副会長の交代についての審議がございます。

現副会長(土田英三郎さん):5年前に副会長を仰せつかりましたが、今年度を持って楽理科を卒業することになりましたので、後任を決めなければなりません。楽楽理会の規約第8条の4項に「現副会長が退任する場合は、楽理科現任教員の互選により次期副会長を選任する」とございます。これに従い互選した結果、満票で大角欣矢さんにお願いすることになりました。これまでの慣例に従うと塚原康子さんにお願いするところなのですが、塚原さんには楽楽理会の事務局長にあたる業務をずっと担っていただいております。そのため、塚原さんには今後もその業務を続けていただくのがよろしいだろうということで、次期副会長には大角さんを推薦することになった次第です。

議長:承認いただける方は、挙手をお願いします。(挙手で承認)ご承認いただいたということで、次期副会長の大角欣矢さんにご挨拶をいただきます。

  1. 新副会長よりご挨拶

新副会長(大角欣矢さん):副会長を仰せつかることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。楽理科の第1期生が1949年、私の入学がその30年後の1979年、そして今年が2019年ですので70年目にあたることになります。意識していなかったのですが、いつの間にか、楽理科の歴史の半分よりも古い時期に入学したことになっておりました。役員の任期は5年と定められていますので、その間、精一杯努めさせていただきたいと思います。何卒皆さまのご協力をお願いいたします。

議長:ありがとうございました。続いて、総会次第5番目の楽楽理会の現状についてです。

  1. 楽楽理会の現状について

塚原康子さん:資料の3ページに楽楽理会の活動について記載しておりますのでご覧ください。総会・懇親会が5年に1回ですので、ここ5年間のことをお話しさせていただきます。5年前には会長と副会長が交代いたしました。会長は前和男さんから現会長の加納民夫さんへ、副会長は片山千佳子さんから土田英三郎さんへ交代いたしました。そして本日、大角欣矢さんに副会長が引き継がれました。 また、この5年間に懐かしい方々がお亡くなりになりました。全員ではないのですが、ご報告させていただきます。2代目会長の前和男さんが2015年に、音研センターに長年勤務された森節子さんが2017年に、亡くなられました。昨年は、楽理科の常勤教員であった上参郷祐康さん、楽理科のいろいろな行事に駆けつけてくれた森泰彦さんが、今年2019年には、楽理科で雅楽の授業を受け持ってくださった芝祐靖さんがお亡くなりになりました。謹んでご冥福をお祈りいたします。 楽楽理会の事業としては通信の刊行と名簿の発行がございます。通信は2013年までは紙媒体で刊行しておりましたが、予算の関係からそれ以降(11号以降)電子版でお届けしております。今年も7月の末日に刊行しております。今年の夏に藝大のサーバー内のURLを変更いたしました。新しいURLは、配布資料の3ページに記載しております。こちらから過去の電子版の通信もご覧になれます。来年も例年通り7月の末に発行する予定でおります。 楽楽理会は会費の徴収をせず、寄付金・名簿の売上金を原資として運営を進めております。来春2019年度版の名簿を発行する予定です。今回は、よりお求めやすくするために、定価をこれまでの2,000円から1,000円に改めました。皆様の承諾を得て情報を掲載しておりますが、いろいろな職種で卒業生が活躍していることを一覧できますので、在学生にも貴重な資料になるのではないかと思っております。 次回の総会は2024年開催の予定ですので、それまで皆様どうぞお体を大切にしていただき、また再会することができればと思っております。

議長:ただいまのご報告について、フロアよりご質問がなければ次第の6番目、楽理科の現状報告に移ります。(質問なし)

  1. 楽理科の現状報告

植村幸生さん:楽理科の現状についてご報告いたします。資料の4ページをご覧ください。こちらには学生数が掲載されておりますが、受験者数にもご関心があるのではないかと思います。大まかな倍率としては2.0倍ぐらいが続いております。一時期1倍近くになってしまいました。このことに危機感を覚えまして、10年ほど前から楽理科として学科説明会を開催しております。現在では音楽学部全体でオープンキャンパスという催しを行っており、楽理科の学科説明会もその一環として行っております。この部屋(5-109教室)が満杯になるほど、多くの方に関心を持ってもらっております。このような取り組みによって、競争率2倍の受験者数をキープしているのだろうと思います。高校を卒業したくらいの方で、楽理科を目指す方が毎年50人もいるということは素晴らしいことだと思います。オープン・キャンパスでは、模擬授業や現役学生との質疑応答なども行っており、楽理科の日頃の活動をお知らせする機会が定着してきております。また、大学院も6月頃に同じように説明会を行っています。楽理科の大学院で学びたいという希望を持っている方が周りにおられましたら、大学院の説明会があることをお知らせいただけるとありがたいです。 授業についてはセメスター制が定着してきました。多くの授業がいわゆる「半期」で行われております。 セメスター制の有利な点として、留学生を迎えやすくなる、あるいは学生が留学しやすくなるなど、国際化に貢献している側面があります。楽理科はもともと国際的ですが、近年ますますそうなっていると感じます。現在でもごくごく当たり前に多くの留学生が在籍していますし、学生を海外に送り出すということも増えております。留学生という言い方もこれからは無くなっていくのかもしれません。 以上、現状報告として3点をお知らせさせていただきました。

議長:楽理科の現状に関して、フロアからご質問ありますでしょうか。無いようでしたら、次第7番目の楽楽理会の会計報告に移ります。

  1. 楽楽理会・会計報告

土田英三郎さん:ここ5年間の楽楽理会の会計報告については、資料の7ページ以降をご覧ください。以前には財政が危うくなることもありましたが、故芝祐靖さんなどからかなりの額の寄付をいただき、保ち直すことができました。その後コンスタントに100万円前後の資産を維持しております。 資料の8・9ページに今年5月8日までの収支、およびその時点での残高(997,499円)を掲載しております。以上については、森田都紀さんに監査していただき、適切に運用されているという報告をいただきました。5月8日以降、印刷費・通信費・会場費などで492,558円を支出しております。これには、中止になった10月の総会のための通信費なども含まれています。また、名簿発行の代金として333,190円(見積もり)が支出される予定です。ここまでで差し引き17万円程度になりますが、名簿の売り上げ代金もあるので、最終決算としてはそれよりも多くの額が残るだろうと見込んでいます。以上簡単ではございますが、会計報告になります。

議長:会計報告についてご意見・ご質問はありますでしょうか。(質問なし)なければ、全体を通してご質問はありますでしょうか。

  1. フロアより質問

慶野由利子さん:懇親会の費用というのはどうなっているのでしょうか。

土田さん:会場費が発生しておりますが、懇親会そのものの収支は別計算になります。

慶野さん:資料8ページ、2015年度の会計報告には懇親会の費用(会場費など)が計上されていないが、どういうことでしょうか。

塚原さん:前回の総会・懇親会は2014年なので、2015年の会計には計上されておりません。

安藤博さん:植村さんからのご報告と関連して、留学生の入学要件として日本語能力に関するものはありますか。

植村さん:大学の規則としても楽理科の規則としてもそのような要件はありません。大学院入学においては日本語による試験を課しており、それをもって日本語能力の確認をしているという状況になります。入学した学生の日本語能力は大変高いと思っております。

小場瀬純子さん:森泰彦さんを偲ぶ会の資料を先ほど受付に置きましたので、ご自由にお持ち帰りいただければと思います。

議長:必要な方はお持ちいただければと思います。他にご質問などがないようであれば、総会の次第は全て終了致しました。

司会:遠山さん、議長をしていただきどうもありがとうございました。最後に2点、告知とご報告がございます。1点目は、来年3月14日に土田英三郎さんの最終講義と演奏会が開催されます。本日配布したチラシの裏面に申し込み方法が記載されております。会場の収容人数がそれほど多くないので、ご興味のある方はできるだけ早くお申し込みください。また、前回の楽楽理会総会以降の出来事として、国際音楽学会の大会が2017年3月に東京藝術大学で開催されましたのでご報告させていただきます。楽理科の現教員と、楽理科を修了して全国の大学で教えておられる先生がたが一丸となって準備・運営をし、大成功のうちに終了致しました。 それでは、懇親会を大浦で行いますので、皆様どうぞご参加ください。総会はこれで閉会といたします。