第20号

主任からのご報告

福中 冬子(楽理科主任)

1.新学期を迎えて

 今年度は基本的にすべての授業を対面で行うという方針のもと、一応はCOVID以前の大学生活に戻りました。実際に学生と向き合い、表情を見ながら声を聴くことの大切さを痛感しています。2020年度に土田英三郎先生の後任として着任された沼口隆先生は、今年度が実質的な「初出講」ということで、色々なことが新鮮であると言っておられましたが、私の場合、2年ぶりの全面通勤で体力の衰え(!)を感じる毎日です。

 現在は芸大奏楽堂の演奏会等も人数制限などを撤廃し、COVID前の状況に戻っています。この2年間、行き当たりばったり感の強い国の方策やそれに沿う方針のため、音楽界は大きなダメージを受けてきました。ただ、すべての失敗からは何かしらの教訓が生まれるわけで、音楽は聴衆(生であれ、ネット上であれ)を必要とするということ、そして私たちの社会にとって音楽はなくてはならないものであるということを多くの日本人が知ることとなったのは幸運なことではないでしょうか。また国際学会等も徐々に対面を再開し、今夏にアテネで行われる国際音楽学会の大会にも、楽理科の博士学生やスタッフが何名か現地参加する予定です。

2.今年度の入学者数等について

 今年度に迎えた入学者数は別表の通りです。今年度は学科出願者が昨年度より若干減りました。6月18日には大学院受験予定者向けの説明会が、7月16・17日にはオープンキャンパスが行われました。後者では、学科説明会(16日)に200名、模擬授業(17日)に80名ほどが参加しました。今年度は学部生4名もオープン・キャンパスに出席し、説明会後・模擬授業後の質疑応答では参加者からの質問に答えてもらいましたが、入試の準備や入学後の学生生活などに関して多くの受験生が不安を持っていることがわかりました。SNSが発達したいま、以前より多くの情報が入るかのように考えがちですが、多くの情報が入りすぎるからこそ、不安になることも多いようです。

3.その他

 昨年度の今頃この場所で、COVID感染者数の増大で重症者・死者が急速に増えているにもかかわらず東京オリンピックが強行されることに関し否定的な発言をしました。そのオリンピックも予定通り終わりましたが、今年6月に出された公式報告書において「大会を間近に控えた時期に起きた組織委員会幹部や関係者の人権に関する言動」が「日本社会全体の議論を活発化させることになった」と書かれていることに失笑を禁じえませんでした。これは森喜朗氏の発言や音楽家小山田圭吾氏の学生時代の行動について触れているものと考えますが、そのロジックの破綻や当事者意識の欠如はもとより、人権に関する様々な問題や意識の低さが日本社会で「やっと露呈した」ことはあれ、「議論の活発化」には程遠い状況ではないでしょうか。こうした誤った歴史認識が文書として残り、この先「21世紀史」の一部として語り継がれていくようなことがないよう、「本当に起こったこと」を私たちひとりひとりが正確に記憶することが必要であると改めて感じた次第です。


楽理科の現状

2022年7月20日現在

講座編成

第1講座 体系的音楽学 教授(兼) 植村 幸生
    教授(兼) 福中 冬子
第2講座 西洋音楽史 教授 福中 冬子
    教授 大角 欣矢
    准教授 西間木 真
    准教授 沼口 隆
第3講座 日本・東洋音楽史 教授 塚原 康子
    教授 植村 幸生

学生数

  • 学部入学定員         23名
  • 学生総数                  136名
  • (学部101名、特別聴講学生1名、修士課程17名、博士後期課程14名、研究生3名)
  • 外国人留学生総数 11名

 

 

学部

修士

 

1年

2年

3年

4年

5年

6年

7年

1年

2年

3年

総数

22

23

23

23

8

1

1

4

11

男子内数

8

8

6

6

4

0

0

0

1

1

女子内数

14

15

17

17

4

1

1

4

10

1

留学生内数

0

0

0

0

0

0

0

0

2

0

 

博士

研究生

 

1年

2年

3年

4年

6年

 

総数

4

2

4

2

2

3

男子内数

1

2

1

1

1

2

女子内数

3

0

3

1

1

1

留学生内数

2

1

1

2

0

3